K18腕時計バンド 修理の手順
お預かりしましたゴールド腕時計バンドは、拡大ルーペで詳しく点検し、修理が必要な個所を確認して作業手順を決定していきます。
18金バンドの片側は表側の取れている1コマだけが修理個所のように見えますが、裏側の直径0.5ミリの撚り線が可動部分と固定部分の境目で金属疲労を起こし折れて多数のコマが外れて無くなっています。
鉢巻のように板地金を貼った場合でも、やはり可動部分と固定部分が隣り合わせに出来てしまい、将来的にはまた境い目が金属疲労で折れてくる可能性があります。
コマの欠落個所を板地金で隠すよりも「撚り線の折れた個所を『点』でロウ付けし、撚り線を足したほうが元と同じ見栄えになり修理がきれい」と思います。
K18時計バンドの撚り線の折れた個所を拡大してみますと、直径0.3ミリ位の丸く溶けた穴がところどころにありますので、以前の補修はレーザーで溶接されていたように見えます。
撚り線の地金側面を0.3ミリの「点」で熔かしつけるよりも、撚り線の破断面を突き合わせて直径0.5ミリの「面」でロウ付けし、合金状態にしたほうが丈夫になると判断いたしました。
追加のコマを制作するための撚り線を準備します。
直径0.25ミリのK18丸線2本を撚り合わせて0.5ミリ幅の撚り線を作るのではなく、直径0.5ミリのK18丸線を縄状にヤスリがけして撚り線のように制作いたしました。
K18撚り線でコマを制作して欠損部分にはめ込みます。
追加した0.5ミリ幅の撚り線の先端部分を元の撚り線の先端とすり合わせて、隣の撚り線とくっつかない様に注意深くロウ付けします。
余分のロウが横にはみ出て隣のコマ同士とくっつくとバンドが動かなくなりきれいに手首に巻けなくなりますので、ロウ自体を 0.1~0.2ミリ角の極小サイズで用意して、断面積と体積を慎重に推しはかってロウの量を決めます。
多数あった欠損部分が、残すところ2ヵ所になりました。
予定した場所より0.1ミリでも横にロウが流れるとコマが動かなくなり失敗ですので、炎の調節を慎重におこないます。
ロウの融点が低い場合は溶けたロウが勝手に走り、融点が高い場合はバンド本体が溶ける可能性が大きくなります。
K18素材に使用するロウも慎重に選びます。
修理個所のロウ付けが全部終わりました。
まだ固まったフラックスが付いています。
酸洗いを済ませて、細部を加工し直し、18金バンドとケースを仕上げる工程に入ります。
18金バンドの磨き仕上げ工程も終わり、時計機械の入るケース部分も光沢新品仕上げがきれいに出来あがりました。
ヘアライン部分もきれいに仕上げ加工を施します。
各パーツや文字板のサビを落とし、パッキンを交換して、サファイアガラスを嵌め、分解掃除を済ませてきれいになった機械部分を組み込み、時刻の調整が出来ると完成です。
K18ゴールド腕時計バンドロウ付け加工等 岡田義昭