南洋パールの軸が根元から折れてしまったので、とお手持ちジュエリーを修理するご依頼をいただきました。
レーザー溶接するにしても、真珠を外さないと作業が出来ない奥まった場所です。
トーチでロウ付けする時は、真珠とブローチに付いているマザーパールを外さないと炎を当てることが出来ません。
ロジウム仕上げも必要です。
軸を3割以上太くして、穴を開けた本体に差し込んで、もう折れないように丈夫に加工することにしました。
南洋真珠に刺さって残っていた軸をはずして、マザーパールをブローチ本体からきれいに取り外します。
先の細い部分まで折れずにきれいにはずすことが出来ました。
太い軸はプラチナで作ります。
ブローチ金具が鉄砲タイプになっていて、針を開閉する時にどうしても南洋真珠を押さえてしまう構造ですので、軸の根元に力がかかるようです。
折れて本体に残っていたホワイトゴールドの線地金とホワイトロウを削り取ってから、ブローチ本体にドリルで1ミリあまりの深さに穴を開けました。
こうして、ロウ付け面積を広くすることで丈夫さを確保します。
太く作ったプラチナ丸線を穴に差し込んでロウ付けしましたので長持ちすると思います。
南洋真珠の接着箇所は、丸線をギザギザにして抜けにくくしています。
ずーっと昔、ブランドもののブローチが壊れて修理に持ち込まれたことがあります。
見ると、接着剤が劣化して金具が外れただけ。
接着剤をしっかり付けて、固定できたものを納品しました。
お客様の一言。
接着剤がはみ出てるのね。
表から見えないところなので、接着面積を広くしようと思いましてきれいにはみ出させました。
それで終わったことでしたが、帰られる後ろ姿から、接着剤が見えない状態にしてもらって、どのように固定されているかが分からないようにして欲しかった、という心の声が聞こえたような気がしました。
見映え最重視ということでした。
それ以来、接着剤ワークにはかなり気を使っています。
1か所を固定するためには、固定接着、充填接着、化粧接着、と、時間をあけて3回接着剤を付ける作業をします。
瞬間接着剤を一滴1秒で付けて終わり、というわけではなく、品物のクリーニングをまず済ませてから三段階の接着作業に入りますので、いつもかなり時間がかかります。
基本は接着剤が縁から見えないことですが、必要な場合ははみ出させています。
接着ワークの最終仕上げには気を配っています。
このブローチは隙間の無いように見えるマザーパールの接着がポイントです。
ジュエリーリフォーム/フルオーダー 岡田彫金工房